ペースト食(ペースト食とは、肉や野菜などを細かくすりつぶして、咀嚼や吸収しやすいように工夫した食事のこと)しか食べることが出来なったご入居者様から「うなぎ」をそのままの形で食べたいとの要望がございました。刻み状態ではありましたが、ご提供さしあげました。これをきっかけに徐々にきざみ食を召し上がれるようになり、食が細く元気のない状態から「ご自分で車いすに移動できる」まで良くなってきた、とご家族様からお礼をいただくこととなりました。食の力は無限です。
また、他施設でもこのようなお話がありました。同様にペースト食にあまり良い印象を持たれていないご家族様のお話です。どうやら「見た目」が気になるとの事。ご家族様がペースト食を試食され「思っていたより美味しいけれど、やっぱり美味しそうに見えない」とのご意見です。ご家族、介護職、言語聴覚士、そして厨房スタッフさんと検討、打ち合わせを重ねた結果、ムース食でのご提供を差し上げる事になりました。
ムース食は冷凍で納品されますが、毎回「蒸し器」で解凍しご提供差し上げます。電子レンジでも問題無く調理できるのですが、蒸して解凍した方が見た目も良くふっくらと仕上がるのです。ここはこだわりのポイントです。お皿に盛り付けると「本当にムース食?」と驚くほど。ご家族様にご試食いただいたのですが「形もあるし美味しいし、なにより見た目が良い」「父も食欲が増すんじゃない?」と太鼓判をいただきました。
追加のご負担をお願いすることになりますがご家族様は納得のご様子です。ムース食導入から2か月ほど経過した時点で、なんと5㎏の体重増。「切り替えてもらって良かった。早く相談していれば」とご家族様。食費のご負担が若干増えてしまいますが、ご家族様のご理解が得られたのは「出来る限り美味しく提供差し上げたい」の想いが伝わったから、と考えています。美味しそうに見えるのなら、ひと手間でもふた手間でもして差し上げたいですね。
新卒からずっと栄養士として働いてきて、仕事が終わっても頭の片隅には食事に関することをずっと考えているように感じます。以前は地方に行って食事をし、その土地の名物を食べて献立に入れたいとよく考えていました。
何故か。「美味しかった」のお声を聞きたいからです。
まだまだ大きな事をやり遂げたと感じることは少なく現在進行形の状態ではありますが、食の力は無限です。現在、MCS(グリーンフードの親会社、アンサンブルや愛の家など介護施設を運営している会社)が運営するグループホームでは「自立支援ケア」に取り組んでいます。タンパク質を多く摂取するプログラムで一定の効果を出しています。そのような取り組みも積極的に関わりながら介護施設の栄養士としてエキスパートになって行きたいと考えています。