「人」が「食」で変わっていく施設 〜介護付き有料老人ホームアンサンブル【心の丈】〜

2022.12.27
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楽しい食事、美味しい食事はとても重要です。身体を維持するため栄養を摂る行為、すなわち「食べる事」が大切なのです。MCSの介護施設には栄養の専門家がいます。栄養についてよく考えられたものを楽しく、美味しく摂取することで、より多くの栄養が身体に届く。体重を維持し、筋肉を衰えないように。歩ける、話せる、いつも笑顔で、前向きな暮らしが実現する。これらを実現するために私たち栄養士が行なっている取り組みをご紹介いたします。

グリーンフード株式会社
アンサンブル大宮日進 栄養士

 

西岡亜希子

 

「食」で「人」が変わっていく介護施設、アンサンブル

困り事を相談されるのが好きな性分なのでしょうか、困っている人を助けよう、食で健康を提供しようと以前は病院に勤務しておりましたが病院は「食」に対し、あまり力を入れてないように感じてしまったのです。本当にそうだったのかどうかは分かりません。ですが「美味しくなさそうなレシピ」「美しくない配膳」「冷めている食事」「残されたおかず」…仕方なく召し上がっているご様子も見て取れました。

 

少なくとも私の目にはそう映ってしまった。だから、召し上がる方の喜ぶ顔が見たくて介護施設への転職を考え始めました。

 

患者に医療を提供し健康を取り戻すのが病院。私が老人ホームに持つイメージは反対に「終の住処」でした。葛藤がありながらもアンサンブルで働き始め、業務を進めていくにつれイメージが逆転していきました。

 

ご入居者がどんどん元気になっていくのです。アンサンブル浦和で働いていた時の事です。抗がん剤治療をされていて食が進まないご入居者がいらっしゃいました。ガン治療時は味覚が変わってしまう事があるようです。今まで食べられていた食事の味が変わってしまう、味を感じなくなってしまう、だから食が進まない。

 

この方向けに食べやすいもの、好きなものをお伺いし、まずは体重を増やしていこうと取り組みを開始いたしました。まずは食べたいもの、好きなものをお伺いしご提供さしあげました。好きなものから召し上がっていただきながら、更に食べやすいもの、口に入れやすいものも合わせてご提供。栄養、体重管理を行っていくにつれ体重も戻り、最終的には体調が良くなり退所されたのです。病院ではそういうケースも多々ありますが、老人ホームの「アンサンブル」でも実現できることが分かりました。

食べるものが美味しくなければ栄養のある食事を作っても食べていただけません。バラエティにとんだ献立を意識しています。

仕事の目的は「シニア世代の豊かな暮らしと輝く笑顔をつくること」

私が所属する「グリーンフード」は高齢者施設を「食」で支えるチーム、ここアンサンブルの「食」を一手に担っています。日々の暮らしに困らない、歩ける、話せる、いつも笑顔で、前向きな暮らしを実現するには健康である必要があります。身体に栄養を届けなければそれらは叶いません。当然、食べるものが美味しくなければ栄養のある食事を作っても食べていただけませんがまずは「栄養」です。

 

全国の介護付き有料老人ホームに在籍するMCSの栄養士が一同に会する会議を、月1回開催しています。栄養士の業務全般の相談、情報共有などを行なっていますが、最近では相談内容から勉強会などに発展し知識の向上に繋がる会議となっています。

 

各施設では栄養士が意見を出し合いながら献立を作成、カロリー制限・たん白質制限・減塩などの疾患に対するメニューの考案を行なっています。

 

私は栄養士ですので、調理師と調整しながらの献立作成、栄養計算、合わせてご利用者の嗜好や治療食、嚥下状態に関することなどの確認を行い、食事に反映するのが仕事です。多くはありませんが悩んだり判断できないケースの場合は、各施設の栄養士に共有、相談を行い、解決しご利用者に合ったお食事が提供できるようにしています。

 

それらの取り組みで、ご自身で食事を摂る事ができないご入居者が、誰の手も借りずに召しあがれるようになったケースを目の当たりにすると、日々の取り組みが功を奏しているのだと感慨深くなります。その方に感謝の言葉を頂けた時は、私がご入居者を「食」で支えているんだと、もっともっと頑張らなければと、嬉しくなりながらも使命感にかられました。

 

「笑顔になってくれること」が私の仕事の目的です。食事で元気になっていただけた、体調が良くなった、 美味しかったよなどのお声を頂くと本当にこの仕事をやっていて良かったと感じます。

「夏バテで食欲がない時でも胃腸に優しい食事」がテーマ。食べやすさだけでなく免疫アップや肝機能を高める効果で夏バテ防止を考えられた献立。鶏飯、鱧天、牛肉しぐれ煮、夏野菜の南蛮漬けなど

なにより食事が楽しみな方へ。「美味しい」を増やすために取り組んでいること

アンサンブルでは栄養士がラウンド(みなさまが食事をされているダイニングへ伺う)を行い、ご入居者様のご要望をお伺いしています。ご入居者から気軽にお話いただく雰囲気をつくることが大切だと考えています。お話をお伺いすることも話すことも好きなのでコミュニケーションには困りませんが、ついつい長話になってしまうことも。

 

さまざまな方がいらっしゃいますので、その方にあったコミュ二ケーション手法を生み出す事が何より大切ですね。最初の頃はお話すら聞いていただけないご入居者がいらっしゃいました。根気よくお声がけすると「おいしくない」「ぬるい」などネガティブなお答えばかり、コミュニケーションの回数が増えていくにつれ「今日のは口に合った」「美味しくて食べ過ぎてしまった」など気さくに話されるようになっていきました。よくよくお話をお伺いすると「あまり話した事もないし」、「伝えたいことがうまく伝わらなくて」と思われていたのだそうです。

 

ご入居者からご要望を聞いていくのはここからです。「たまには○○○○が食べたいわ」とのお話をうまく伺えればミッション完遂でしょうか。食べてもらえないと元気になれない。何を召し上がりたいか、味はどうか、などを伺う時間はとても大切なのです。

 

一人の方とお話していると、次から次へと他の方からもお声がけいただき、そのうちお話に花が咲いてしまうこともあります。このような取り組みも、食事を「楽しく」召し上がっていただく要素になっているのかもしれませんね。

 

味の濃い薄い、食材の柔らかさ、硬さ、温かさ、ボリューム、香りなど、10人いれば10通りの味覚がある。「薄い」にもまた、味付けの事であったり、それ以前に素材だけの味を大切にする方もいる。それぞれこだわりをお持ちなのです。食事をご提供する前に検食し、ラウンドに行ってお話を伺うの繰り返しです。ごはんの硬さひとつとっても合わせるのが大変ですが、もっともっと「美味しいが増えていく」を目指しています。

高齢者施設を「食」で支えるチーム、ここにあり

他社と違い元飲食店勤務の調理師が多く、本格的な料理にも対応できる。それが「アンサンブル」の売りだと考えております。


イタリアンレストラン出身で病院勤務の経験があり、 栄養士の資格を保有している調理師が在籍しています。治療食なのにお洒落でセンスのある料理も手がけられます。ドイツにあるフランス料理店でシェフ・ド・パルティ ガルドマンジェ(前菜の部門シェフ)として修行し、その後病院に勤務した事もある調理師など、バリエーション豊かな経験を積んだ調理師が多く在籍しているのがアンサンブルの特徴でしょうか。前職が製菓出身、スイーツに関しては毎月各施設の手づくりスイーツをご提供するなど、他社施設より「食」が際立つ介護施設としてアドバンテージがあると考えています。


お誕生日などの「特別食」は、お好きなものをヒアリングをおこないご提供しております。親しみのある食事をご希望される方も多いのですが「ラーメン」を希望される方も少なくありません。介護施設だと「熱々のラーメン」をご提供するのが難しいのですが、調理法とタイミングを駆使し、しばらく冷まさないと召し上がれないほどの激アツラーメンをご提供さしあげる事ができました。

 

お酒を嗜まれる方には、焼き鳥や揚げ出し豆腐のような居酒屋風のレシピも。変わったご要望を頂戴する時ほど調理師もわたしもテンションが上がり、楽しいと感じてしまいます。召し上がられるご入居者のお顔を想像すると更にエスカレートすることも(笑)

月に一度の行事食。実際にご提供させていただいたクリスマスディナー

月に一回、行事食を提供させていただく機会があります。ちょうど今頃(12月終わり頃)、先ほどのイタリアン出身シェフがクリスマス料理に情熱を傾けています。バルサミコ酢をソースに使ったステーキです。何度も精肉店に通い、質の良い牛肉を仕入れ、試作するも肉の柔らかさに納得がいかないようで、あらゆる手を使って柔らかく仕上げることに成功した逸品です。付け合わせはマッシュポテトのようなマリネのサラダ、デニッシュのパン。ここは介護施設なのか?と疑問に思うほど本格的なレシピです。


高齢者施設を「食」で支えるチーム、ここにありです。


とはいえ、和食・洋食・中華など満遍なく、施設によってご入居者の嗜好も少しずつ違うので微調整を行いながらバランスよくレシピを考案しています。ご年齢によって、食の好みや傾向が当然ありますが、やはりシンプルな和食が好まれているようですね。栄養の観点でもそうですし、食べやすさは一番大切ですから。

旬のお刺身は最も喜ばれるメニューです。冬場のお魚がおいしい時期は、目の前で握る寿司イベントなども実施しています。

 

目の前で揚げたてを召し上がっていただける天ぷらイベントも実施しています。

介護施設の栄養士として、大切にしていること

ペースト食(ペースト食とは、肉や野菜などを細かくすりつぶして、咀嚼や吸収しやすいように工夫した食事のこと)しか食べることが出来なったご入居者様から「うなぎ」をそのままの形で食べたいとの要望がございました。刻み状態ではありましたが、ご提供さしあげました。これをきっかけに徐々にきざみ食を召し上がれるようになり、食が細く元気のない状態から「ご自分で車いすに移動できる」まで良くなってきた、とご家族様からお礼をいただくこととなりました。食の力は無限です。


また、他施設でもこのようなお話がありました。同様にペースト食にあまり良い印象を持たれていないご家族様のお話です。どうやら「見た目」が気になるとの事。ご家族様がペースト食を試食され「思っていたより美味しいけれど、やっぱり美味しそうに見えない」とのご意見です。ご家族、介護職、言語聴覚士、そして厨房スタッフさんと検討、打ち合わせを重ねた結果、ムース食でのご提供を差し上げる事になりました。


ムース食は冷凍で納品されますが、毎回「蒸し器」で解凍しご提供差し上げます。電子レンジでも問題無く調理できるのですが、蒸して解凍した方が見た目も良くふっくらと仕上がるのです。ここはこだわりのポイントです。お皿に盛り付けると「本当にムース食?」と驚くほど。ご家族様にご試食いただいたのですが「形もあるし美味しいし、なにより見た目が良い」「父も食欲が増すんじゃない?」と太鼓判をいただきました。

 

追加のご負担をお願いすることになりますがご家族様は納得のご様子です。ムース食導入から2か月ほど経過した時点で、なんと5㎏の体重増。「切り替えてもらって良かった。早く相談していれば」とご家族様。食費のご負担が若干増えてしまいますが、ご家族様のご理解が得られたのは「出来る限り美味しく提供差し上げたい」の想いが伝わったから、と考えています。美味しそうに見えるのなら、ひと手間でもふた手間でもして差し上げたいですね。

 

 


新卒からずっと栄養士として働いてきて、仕事が終わっても頭の片隅には食事に関することをずっと考えているように感じます。以前は地方に行って食事をし、その土地の名物を食べて献立に入れたいとよく考えていました。


何故か。「美味しかった」のお声を聞きたいからです。


まだまだ大きな事をやり遂げたと感じることは少なく現在進行形の状態ではありますが、食の力は無限です。現在、MCS(グリーンフードの親会社、アンサンブルや愛の家など介護施設を運営している会社)が運営するグループホームでは「自立支援ケア」に取り組んでいます。タンパク質を多く摂取するプログラムで一定の効果を出しています。そのような取り組みも積極的に関わりながら介護施設の栄養士としてエキスパートになって行きたいと考えています。

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