TOP 介護にまつわるコラム 介護とお金のあれこれ。介護費用にまつわる基礎情報や節約方法、貯蓄方法など、役立つ知識をご紹介します
2022.03.24
  • 介護にまつわるコラム

介護とお金のあれこれ。介護費用にまつわる基礎情報や節約方法、貯蓄方法など、役立つ知識をご紹介します

「家族に介護が必要になったけど、どのくらいお金が必要なの?」
「在宅や施設など、各サービスの金額はどう違う?」
「将来を見据え、費用感を知りたい」
「介護費用により、生活に困ったらどうしよう…」

 

家族を介護するうえで「介護施設の費用」「ヘルパーの費用」などどのくらい費用が必要か理解している人は少ないのではないでしょうか。

 

目安となる介護費用を把握することで、「お金がないから介護サービスが受けられない」というリスクを避けられます。

 

今回は、介護費用や自己負担を減らす方法など、介護に関するお金の基礎知識を徹底解説いたします。

 

1か月に必要な老人ホーム・在宅での介護費用はもちろん、介護資金を貯金する方法まで詳しく見ていきましょう。 

介護にかかる費用は? 想定されるケースや期間をもとに、費用の相場をご紹介

介護方法は大きく2つに分けることができます。

 

・自宅に住みながら介護を行う「在宅介護」
・有料老人ホーム等の施設に入居する「施設介護」

 

また、介護保険サービスを利用する場合、費用は下記の状況で増減します。

 

・介護の必要度を表す要介護度
・所得による利用者負担割合

 

介護費用は個々人の介護レベルや経済状況によって大きく変わります。自身の状況を整理したうえで、詳しい費用目安を調べる必要があります。

在宅介護と施設介護、それぞれの平均介護年数と費用

ここからは在宅介護と施設介護に分け、費用と平均介護年数を比較していきます。

 

介護費用を左右する要素は多数あるため、それぞれ詳しくみていきましょう。

 

在宅介護の費用

公益財団法人・家計経済研究所の調査によると、在宅介護にかかる月額費用は平均で「50,000円」でした。

 

また、在宅介護では主に以下の費用がかかります。

 

・介護サービス費…訪問介護やデイサービス等の介護サービス利用費
・介護サービス以外の費用…おむつ代や通院・薬などの費用

 

月額平均の内訳は、介護サービス費が16,000円、介護サービス以外の費用が34,000円となっています。

なお中央値は「月間33,000円」であることから、在宅介護ではおよそ3~5万円が必要だとわかります。

参照:公益財団法人 家計経済研究所:在宅介護にかかる費用


施設介護の費用

施設介護は、以下の2種類に大きく分けることができます。

 

・公的施設…特別養護老人ホームや介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設
・民間施設…民間企業が運営する介護付き有料老人ホームやグループホーム、住宅型有料老人ホームなど

 

代表的な介護施設の費用目安は以下のとおりです。

施設の種類

施設名

月額費用(円)

公的施設

特別養護老人ホーム

128,000

民間施設

介護付き有料老人ホーム

227,000

住宅型有料老人ホーム

110,000

サービス付き高齢者向け住宅

135,000

グループホーム

100,000150,000

多床室やユニット型、個室型といった施設形態、地域や収入状況などにより、月額費用は変動します。上記データを参考に±5万円程度を見積もりましょう。

 

参照:「高齢者向け住まいにおける運営実態の多様化に関する実態調査研究 報告書」

「MCS グループホームとの費用感の違い」

「厚生労働省 介護老人福祉施設」


平均的な介護の期間は?

公益財団法人・生命保険文化センターの調査によると、介護に要する平均期間は4.7年でした。なかでも介護年数が4年以上だった人は4割を超えています。
当然のことながら長期化するほど介護費用は増えるため、長い期間での介護費用を考えることが重要なのです。

要介護度と所得による自己負担金額の違い

続いて介護の必要なレベルを表す「要介護度」と、所得による自己負担割合の違いをみていきましょう。

 

要介護認定がされると、介護保険サービスの利用が可能となります。要支援・要介護度ごとの支給限度額と、それに伴う自己負担額は以下のとおりです。

 

支給限度額(円/月)

自己負担1割(円/月)

要支援1

50,320

5,032

要支援2

105,310

10,531

要介護1

167,650

16,765

要介護2

197,050

19,705

要介護3

270,480

27,048

要介護4

309,380

30,938

要介護5

362,170

36,217

参照:厚生労働省 2019年度介護報酬改定について

 

要支援・要介護度が上がるにつれて、自己負担額は大きくなる傾向にあります。また、所得による自己負担割合は以下のとおりです。

 

負担割合

年金収入等が340万円以上

3割

年金収入等が280万円以上

2割

年金収入等が280万円未満

1割

参照:厚生労働省 介護保険における現役世代並みの所得のある者の利用者負担割合の見直し

実際は、合計所得金額や夫婦世帯など、細かい基準が設けられています。いずれにせよ、所得が増えることで自己負担が増加する点に注意しましょう。

介護費用の自己負担を減らす方法4つ

自己負担を減らしながら「家族の介護を長く続ける手段」を知ることは大切です。

ここからは、介護費用を抑えることができる4つの方法を紹介していきます。

①ケアマネジャーに費用の相談をする

1つ目の方法は、「ケアマネジャーに費用の相談」をすることです。

 

介護サービスは、ケアマネジャーが要望や情報収集をもとに作成する「ケアプラン」に沿って提供されます。

 

そのため、費用をケアプラン作成の際に考慮してもらえるよう「どのくらい費用を抑えたいのか」をハッキリ伝えることが重要です。

②費用が軽減されるサービス・施設を利用する

2つ目の方法は、「費用が抑えられるサービス・施設を利用すること」です。以下のような手段により、介護費用を軽減できる可能性があります。

 

・介護保険サービスの助成制度を活用する
・介護保険サービスの減免制度を利用する
・入居一時金のかからない施設に入居する
・地方へ移住する

 

介護保険サービスには「助成・減免制度」が設けられています。たとえば、一定額を超える支払いに対し超過分が払い戻される「高額介護サービス費制度」や、低所得者の居住費と食費負担を軽減できる「特定入所者介護サービス費」などがあります。

 

また、介護施設の月額利用料には「家賃」が含まれます。そのため、地方の施設に転居することで利用料が低くなる可能性があります。

③世帯分離の手続きをする

3つ目の方法は、「世帯分離」です。世帯分離とは、住民票に登録されている一つの世帯を、二つ以上の世帯に分けることです。

 

世帯分離を行うことで、以下のようなメリットが生じます。

 

・高額介護サービス費において、自己負担の上限額が下がる
・国民健康保険料の負担が下がる

 

親世帯と合算していた所得が分かれることにより、「所得が少ないのであれば、介護費用や健康保険料の支払いは難しい」と判断されやすくなります。結果として、介護費用を抑えられる可能性があります。

 

一方、デメリットとして2世帯をトータルで考えると健康保険料が増加したり、同一世帯ゆえ介護サービス費を合算できていたものが、できなくなったりする可能性がある点に注意しましょう。

④年金を活用する

4つ目の方法は、「要介護者の年金を活用すること」です。

 

厚生労働省の調査によると、老齢厚生年金の受給額は1か月で約146,000円。国民年金は56,000円となっています。

参照:厚生労働省 令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

上記の金額を参考に「年金受給額が介護費用を超えていないか?」を年金振込通知書でチェックしてみましょう。

 

介護費用を要介護者本人の収入でまかなうことができれば、介護者の経済面の負担は軽減できるでしょう。

介護資金を貯める方法3つ

家族の介護費用を考えるうえで、「自分の老後が心配になってしまった」「介護費用で家族に迷惑をかけたくない」と感じた人は多いのではないでしょうか?


ここからは、介護資金を貯める具体的な方法を3つ紹介します。

①預金

介護資金を貯めるうえで堅実な預金は重要です。必要となったときに出し入れが可能で、投資等と違い減額のリスクはありません。

 

しかし、低金利と物価上昇による実質的な目減りなど、社会の動向を見据え取り組みましょう。

 

勤めている会社の「財形貯蓄制度」や「社内預金制度」等を活用すれば、給与から一定額を預金することができます。預金を習慣化することが難しい人でもできるので今からでも始めてみましょう。

②個人年金保険

公的年金や企業年金では老後の資金が追い付かないと考えられる場合、個人年金保険を活用することで老後資金を貯められます。

 

個人年金保険は毎月保険料を払い込むことで、所定の年齢に達すると年金を受け取ることができます。

 

個人年金保険料控除による節税メリットは大きいです。また、途中で解約した場合、解約返戻金が戻ってきますが、支払った保険料よりも少なくなるのが一般的です。

③iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自ら掛け金を払って運用し、資産形成を行う私的年金制度です。60歳になるまで運用したのち、老齢給付金を受け取れます。

 

主なメリットは、「掛け金が全額所得控除となること」「非課税で再投資できること」「受取時に控除があること」の3つです。

 

60歳まで引き出せない点に注意すれば、税金面で多くのメリットを得られます。計画的に制度を活用し、老後の準備に役立てましょう。

介護費用について考える際のポイント4選

介護費用について考える際、重要なポイントは以下の4つです。

 

・家族で介護に必要な費用について話し合う
・民間の介護保険を活用する
・要介護者の資金を活用する
・費用面のコストばかりを重視しない

 

介護費用が安い・高いといった面だけでなく、時間コストや民間制度など、考慮すべきポイントは多々あります。

 

幅広い視点から介護費用について考えられるよう、それぞれ詳しくみていきましょう。

①家族で介護に必要な費用について話し合う

1つ目のポイントは、「家族と介護費用について話し合うこと」です。

 

「介護にいくらお金をかけられるのか?」「貯蓄はどのくらいあるのか」「今後どのように過ごしていきたいか?」といった現状や、親の希望を明確に把握している人は少ないのではないでしょうか?

 

しかし、介護は数年単位となるケースが大半です。親の貯蓄や収入を踏まえて計画を立てない限り、将来経済リスクに直面する可能性が高まります。

 

そのため、出来るだけ早く親の経済状況を把握しましょう。経済状況と親の希望をすり合わせることが、生活の質の向上に繋がります。

②民間の介護保険を活用する

2つ目のポイントは、「民間の介護保険に加入すること」です。

 

民間の介護保険とは、生命保険会社等の民間企業が提供している保険商品をさします。

 

自己負担が軽減される公的介護保険と違い、民間介護保険では「現金給付」となります。そのため、幅広い介護サービスに対し制限なく使用できるのがメリットです。

 

一方、「保険商品を選定しなくてはならない」「加入条件を満たせないことがある」といったデメリットもあります。

③要介護者の資金をうまく活用する

3つ目のポイントは、「要介護者の資金をうまく活用すること」です。具体的には、親の貯金や年金等を介護費用に充てることを指します。

 

生活費用を考慮すると、すべての介護費用を介護者の収入でまかなうことは難しい場合が多いです。しかし、親のお金に手を付けることに対して罪悪感を覚える人も少なくないでしょう。

 

そのため、「もっとも大切なのは親の生活を守ること」である点を理解しましょう。生活改善の努力と、予算とのすり合わせを続けることが重要です。

④費用面のコストを重視しすぎない

4つ目のポイントは、「介護費用のコストばかりを考えないこと」です。

 

たとえば、在宅介護と施設介護を比較した場合、在宅介護のほうが費用負担は少ない傾向があります。しかし、介護者は多くの時間を介護に費やす必要が出てきます。そのため、身体的・精神的ストレスは増えやすいというデメリットがあるのです。

 

このように、目先の費用を追うのではなく、時間や体力といった目に見えないコストも考慮しましょう。

まとめ

介護費用はサービス形態や内容などで大きく変動しますが、多くは1か月で3~10数万円ほど必要です。

 

介護期間が長くなるほど必要なお金も増えるため、早めにケアマネジャーや親と相談するよう心がけましょう。

 

また、すでに家族の介護を行っている人も、より手軽な費用の施設に転居したり、自分の老後に向けて準備を始めることでお金の不安は軽減できます。

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